株式会社ファルマクリエ神戸

Dr. TANIGICHI's Report

Dr. TANIGICHI's Report 谷口先生レポート

REPORT 06

炎症反応・免疫反応とは何か

一般的に炎症と聞けば身体に悪い反応が起こっていると思われる人が多いのではないでしょうか。そして炎症があればそれを抑える抗炎症剤を使う人が多いと思います。
果たしてそうでしょうか。
かって生物が地上に現れた際、生物は常に生体に障害を及ぼす刺激、例えば降り注ぐ紫外線、身体を取り巻く有害物質にさらされていました。そういった障害から身を守り、損傷を修復するために身に付けた生体反応、それが免疫反応であり炎症反応です。
従って、炎症を起こすことが出来なくなった生物は生存できなくなります。
すなわち
炎症・免疫反応無くして生命無し
ということになります。


炎症

それでは、炎症とはどのような生体反応なのでしょうか?

古代ローマの医師、ケルススは、炎症の主な特徴として以下の4つを挙げました。
発赤 (Rubor)
疼痛 (Dolor)
発熱 (Calor)
腫脹 (Tumor)

これらは「ケルススの4徴候」と呼ばれ、今日でも炎症の診断に用いられます。


ケルススの4徴候の意味

発赤 - 毛細血管透過性、細動脈の拡張により血流の増加
この血流の増加が治癒に必要な物質供給と除去を活性化します。

疼痛 - 炎症の場合、当該部位に遊走した食細胞などが、キニン、プロスタグランジンなどの化学物質を放出し、痛み感覚の受容器を刺激します。これにより、生体は異常の生じたことを認知して防御治癒のための個体行動を起こすことが出来ます。

発熱 - マクロファージ、白血球が発熱物質を産生することで引き起こされます。修復細胞・免疫細胞などの体細胞は高い温度下で運動量が増大し、活発に働きます。これが熱を産生する理由です。

腫脹 - ヒスタミン、キニン、ロイコトリエンなどの働きで毛細血管透過性が増すため、当該部位に血流が増大し、腫脹が生じます。腫脹は活発な物質交換の場を提供することになります。


これら4徴候は生体防御に必要な反応なのですが、これらが起こると患部の局所機能が低下することがあります。そのため、「ケルススの4徴候」に<機能障害>を加えたものを「ガレノスの5徴候」と呼ぶことがあります。


免疫

炎症は、赤み、痛み、熱や腫れといった症状を引き起こし、これらによって病原体を殺菌し、損傷した組織を修復することで生体を防御する反応です。一方、免疫は、体内に侵入した異物(抗原)を認識し、排除するシステム全体を指します。免疫には、自然免疫と獲得免疫の2種類があり、炎症は主に自然免疫が関わる反応です。両者は生体を防御するために同時に起こることがよくあります。


自然免疫: 生まれながらに備わっている免疫で、非特異的な免疫とも呼ばれます。あらゆる種類の異物に対して、素早く反応します。

獲得免疫: 後天的に獲得される免疫で、特異的な免疫とも呼ばれます。一度感染した病原体を記憶し、再び同じ病原体が侵入してきたときに、より効率的に排除します。